授業での「思考させる時間」作りの参考になった。

2023/06/08

本書は、「すべての基礎は欲望である」との表示を新書カバーのどまんなかに置きます。さらに、「現代思想の行きづまりを打破し、根本的に刷新する。」とあります。「夢よりも深い覚醒へ」のなかで、見田宗介氏は、「日本人にとって、在日異民族の問題は、非常に特殊な、部分的な問題であるかのように今はみえている。けれども日本語の思想世界が、幾十万という民族的〈他者〉をその内部にもつこと、かれらが日本語で考えそして書く、独自の主体として立ち現れているということ、そしてかれらのさらに周辺に、混血者という二重に境界的な思想の世代を形成しつつあること、これらのことは、この思想世界の前線に、かけがえのない開口部を形成している。」「フッサールもそしてマルクスもフロイトも、ドイツ語で考え、そして書くユダヤ人だった。ヨーロッパ世界の中でユダヤ人が最も創造的な思想を生み出してきたのは、かれらがその生きる世界の中での〈他者〉でありつづけたからだ。ユダヤ人と韓国人・朝鮮人との民族的アイデンティティのあり方の相違、ヨーロッパ社会と日本社会との性格の相違に応じて、〈在日〉韓国人・朝鮮人は、ヨーロッパのユダヤ人とは異質の仕方で、けれども同様に創造的な思想の主体として立ち現れるだろうし、それはわたしたち〈在日〉日本人たちの思想に、鮮烈な刺激を与えつづけるだろう。」「もちろんそのために、時代おくれの悪法やその他の差別が存続してもよいということにはならない。幾人かの偉大な思想家を生むことよりも、ふつうの人間が背すじをのばしてかったつに生きられるということの方が、思想としても大切なことだからであり、そしてまた、すぐれた思想を生み出す力をもつ矛盾とは、〈不幸〉だけから来るというものでは断じてないからである。」と説きました。この結論部の前に竹田氏の紹介がありますが、これは直接講談社学術文庫『現代日本の感覚と思想』でお読みください。見田氏は、本年4月に死去。氏の書かれた「覚醒」の一語、本書に透徹した論理の淵源であると思います。力不足で、部分的に理解できぬ引用もありましたが、総論はわかりました。

2023/06/06

前半の丁寧な説明から打って変わり、後半からは説明が不十分になり、初見では解けない問題が出てくる。これでは挫折してしまう人が出てくるのではないかと思う。

2023/06/03

これはこれまで許さんが書いた著書の中での一番のヒット作ではないのかな。クラシック関係の作品の場合は、どうしても文章で伝えられるメッセージには限界がありますから。それに対して、日本文学の場合は、作品の中で、原作品の引用を行うことにより、メッセージがより生き生きとして、明確に著者の主張が伝えることが可能となります。”プロレタリア文学はものすごい”という荒俣宏の作品がありましたが、この作品も、同じように、忘れ去られた作品の隠れた価値の復権を狙いとした作品です。”邪悪な文学誌”とは違い、必ずしも、現代の価値観からの転倒した読み直しというアプローチはとっていません。むしろ、金の亡者と化しつつある現在の大学での生存競争のためでしょうか、”人間の悲しさ”という成熟した普遍的な認識がアプローチの基盤となっています。最初と最後の、岡本かの子の作品の解読に、この認識が明確に現れています。党生活者の青春小説としての位置づけや芋虫や鏡花の解読の部分ももなかなかユニークです。著者も述べていますが、破戒の衝撃的なエンディングについてはぜひ含めてほしかった部分です。さてもう一回日本文学を読み直してみましょうか？

2023/05/30

知っている作品なら理解できますが、全く知らない作品は理解出来ないものがありました。が、本作を読んで見ようかなと思いました。

2023/05/30

「名づけえぬ欲望」なのは最初の「わしとわが煙突」だけで、あとは結局のところ全部ホモでは…？　

2023/05/29